握手誘導 Handshake induction
欧米では日常のあいさつとしてよく握手が行われる。
それを催眠誘導に利用しようとするのがこの「握手誘導」である。
次に紹介するサイトには、その実例が掲載されている。
http://www.squidoo.com/handshake-induction
<握手誘導に関する簡単な訳文>
「隠された催眠」の真のマスターといえば、ダレン・ブラウンのような人です。彼は、催眠現象が起きていると被験者に気付かせずに催眠状態に入れることができます。被験者がトランス状態でなくなった後でさえも。催眠誘導は、会話技法がより有効となるように使われています。
次のビデオをちょっと見てみると、ダレンが握手の前に、既にこの男に働きかけているのがわかります。そして、感情のインパクトやラポールそして暗示との関係を深めるために彼は握手によってそれを強化するのです。
握手のシーンは、1:27から。
ちょっと見て、それからもう一度じっくり見直してください。
ダレンがどんなふうに被験者の腕をときどき触って暗示のアンカーを入れ続けているのか、銘記してください。
【動画のあらまし】
- メガネをかけた男性に誕生日プレゼントをするという設定。
- 男性は前もって何が欲しいかを書いて、財布の中に持っている。
- ダレン・ブラウンは彼にプレゼントとしてふさわしいのは何かということを語りかける。「ワインとかチョコレート」などは良くない等。
- そして、「プレゼントとして、何が欲しいですか?」と聞く。
- メガネをかけた男性は「赤いBMX自転車」と答える。
- 後の箱を開けると、赤いBMX自転車が入っている!
- ところが、男性が前もって書いていたのは「皮のジャケット」
- しかしながら、やっぱり「赤いBMX自転車」の方が欲しいと言う。
ここでは、「握手をしそこなうこと」が催眠誘導のテクニックとして使われている。
ダレンは握手をすることなく、差し出された右手を左手でとどめるのだ。
参考としてグリンダー/バンドラー共著による「
瞑想誘導
」(大陸書房)を挙げる。
111ページでは、このやり方を「パターン・インタラプション(中断)と呼ばれる誘導方式の一例」と書かれている。
「人間がもっている決まりきったパターンを検証したいと思うなら」、「そのパターンをまず実行してみてから、途中で中断してみることです。」とのこと。
そして、要約すると、
<習慣的な行動様式を相手が行っているとき、それを中断することで相手はとまどってしまう。そのポイントで、その状態からあなたが引き出したいと考えている反応へと相手を移行させるための指示を与えるのだ。>
といったことも書いてある。
同書の103ページに書かれているやり方:
「デビッドが手を伸ばすと、ジョンは左手を伸ばし、デビッドの手首を軽くつかみ、彼の顔の近くまで持ち上げる。そして、右手の人差し指でデビッドの手のひらを指さす。」
「手を見て下さい。見ていると…(中略)…腕が自然に下がっていくと、目が重たくなって、閉じていきます。…(後略)…」
参考として、以下の動画をご参照。
書かれているのとやりかたはちょっと違うが、本質的には同じことだと思われる。
ダレン・ブラウンのやり方はこれとは違うけれども、やはり左手で差し出された右手の手首をつかんでいる。
実例を見るのは、やはり参考になる。
■エリクソン派の握手誘導
エリクソン派の握手誘導のやりかたは、前回紹介したダレン・ブラウンやグリンダー/バンドラーが「瞑想誘導」で述べた握手誘導のやりかたとは異なっている。
まずどんなものか実感するために、次の2つの動画を見ていただきたい。
被験者の右手をとり、腕のカタレプシー(硬直)を引き起こすまでがエリクソン派の握手誘導。握手をした後、右手は被験者の中指あたりを挟み込むようにしてタッチし、次いで、左手でカタレプシーを決める位置を定めているように見える。そして、軽く腕を転回させる。
微妙な右手の動きと、それに同調するかのような左手の動きに注目してほしい。
前の動画とは被験者が逆の位置にある。しっかり握手をした後の動きに注目。右手の親指は被験者の中指のあたり、左手は手首のあたりで微妙なタッチを行っている。そしてカタレプシーを起こす位置を定めた後、右手で関節をを決めるような動きをするまでが、握手誘導。なお、2:30あたりのところでは、数字健忘(5の数字を忘れてしまい、両手の指を数えると、なぜか11本に!)という現象のデモンストレーションを行っている。
エリクソン派の握手誘導では、「握手をし損なう」ということはない。まず、通常通りの握手を行っている。
次いで、握手した手を緩めたあとに、まるでマッサージでも行うように被験者の手を右手と左手でタッチしている。このタッチは、被験者の注意を引くことができるくらいがちょうど良いくらいのあいまいな感じ。右の親指で中指をタッチしたと思ったら、今度は小指でのタッチに切り替える。これを繰り返す。 そして、被験者の反応を見ながら、そっと手首の下あたりを持ち上げるようにし、次いでそれを押し下げる。手を離しても被験者の腕が上がったり下がったりしないような位置、ちょうど硬直が起きる位置に持ってくる。
ひじの関節の位置を調整、腕の筋肉との関係で可動域が少なくなる場所で決める。
最初の動画でもわかるように、言葉を使わないでカタレプシーを引き起こしている。この点では、握手を中断することによるパターン介入でできたこころの空白地帯に暗示を埋め込むやり方とは違った性格を持つ。
なお、握手誘導ではないが、腕カタレプシーの類似の手法を参考までに紹介する。林貞年「催眠術の極め方」(現代書林)のp。75-78には、<腕浮遊の手順>として、これよりも簡素化した方法が書かれている。
「被験者の眼を見ながらどちらかの手を持って腕をゆっくり胸のあたりまで持ち上げます。そのまま被験者の手を下から支え、”この手はここで浮いたままになるんだよ”といった感じで支えている手をそっと離していきます。 被験者の手が下に降りて来そうだったら、”ここで止まっていなさいよ”といった感じで再度繰り返します。あくまでもソフトに……。」ということだ。
■3ステップ握手誘導
NLP型、エリクソン型ともちょっと違うやり方。
まずは動画をみてみよう。
被験者に前もってこんな風に説明している。
- 1.握手をします。私の目を見ていてください。まぶたが重くなってくるでしょう。
- 2.握手の次のステップでは、あなたは目を閉じます。リラックス度合があなたの体の動きにつれて2倍になります。
- 3.握手の最後のステップで、あなたの頭は前に垂れます。そして深いトランスに入るでしょう。
そして、
- 1.握手 「目を見て」
- 2.「目が閉じるでしょう」
- 3.頭が前に落ちそうな瞬間に、「瞬間催眠」タイプでよくみかける、手を引っ張って体を前に落としながら「sleep!」と言う。
これを3段階握手誘導と言っている。
- 1.握手ステップ1 目を見つめて~
- 2.握手ステップ2 目を閉じて、リラックス~
- 3.握手ステップ3 ハイ、トランスに入って~
というようなイメージである。