前世療法の危険性

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前世療法における危険性
Past Life Therapy

数年前あたりから【前世療法】が流行っています。

一般的に前世療法とは、催眠によって出生以前まで記憶を退行させ、前世だとされるイメージを見る事によって、ストレスの緩和、心的外傷、その他多くの症状に効果があると説明される。
この分野ではアメリカ合衆国の精神科医であるブライアン・L・ワイス博士が有名である。
こと日本において前世療法とは、スピリチュアル・ブームに乗って流行したオカルト療法の一種と言って過言ではないでしょう。
催眠に関する公的資格が(日本には)存在しない事もそれに拍車をかけ、「1回のセミナーで資格を取得できる」「誰でも簡単にできる」「すぐに仕事として開業できます」といった誇大広告や乱立するセミナーなどによって心理学の基礎を持たない自称催眠療法家がたくさん世に出ました。
その結果いまだに危険性に関する知識を持たないまま前世療法を行う人が多いのが実情です。
(スピリチュアル・ヒーリング、オカルト療法に関する危険性についてはいずれ執筆の予定)
前世についてさらに考察したい場合はまずこの本を読みましょう↓

無意識や潜在意識、あるいは夢などに過大な期待をかける人もいます。
しかし『無意識』とは実証が困難であることから、あくまで仮説である、という事を忘れてはいけません。

よく【表層意識は全体の1~2割。無意識は8~9割を占める】という説や、【無意識には無限のパワーが秘められている】という説も有名ですが、これにも実は根拠がありません。
この説はおそらくキリスト教から派生し、エサレン研究所などの流れから来た、ニューエイジ運動、光明思想、ニューサイエンスなどの影響を受けた考え方だと思われます。
例としてニューエイジとは、1960年代後半から1970年代にかけて、アメリカ西海岸を中心に起こった反戦・反権力・反既存科学の思想潮流です。
主な特徴として、
・可能性の極端な強調
・客観性よりむしろ主観的な体験の重視
・直観(気づき)の優位と論理的思考の否定
・欲望の肯定
・自然への回帰
等があげられるでしょう。
それらの思想はいま現在もっている能力よりむしろ【可能性】を過大評価する傾向があるため、氷山などのイメージと容易に結びついたのは想像に難くありません。
また直観の優位性を謳うがために科学的な誤りなどに気付きにくく、指摘されると反論する事もあるが、多くは感情論の域を出ないため議論が成り立たないだけでなく、議論そのものをネガティブで悪い事であるとして批判する場合もあります。
 余談ですが、よく知られているナポレオン・ヒルや、マーフィーの法則、引き寄せの法則、その他多くの自己啓発セミナーの類はこういった宗教思想を源流としています。

【コラム】

ニューソートの歴史などに関してはこちらの本が参考になります↓

さて、前世療法の危険性に関してです。
催眠状態と前世の関連性については、現在のところ【証明されていません】。
また、前世が実在するかどうかも【証明されていません】。
催眠中に見るイメージは過去のイメージの合成、つまり【作話】です。

1970~1980年代にかけてのアメリカでは、幼いころ父親にレイプされたり、虐待された記憶をもつ子供がたくさん現れました。
そして実際に裁判になり、多くのえん罪を生みだしました。
虚偽記憶(False Memory Syndrome)【wiki】です。

退行催眠によって【過去の記憶を正確に思い出す事が出来る】【忘れていたトラウマを思い出す】などと言った、催眠に対する過度の期待や、「論文を書きたい、脚光を浴びたい」といった欲求が催眠療法家にこのような行動をさせてしまったのだろうと言われています。

認知心理学者のエリザベス・ロフタスはこういった状況を目の当たりにし、虚偽記憶について研究しました。
有名なものですと【ショッピングモールの迷子】実験というのがあります。
この実験でロフタスは24人の被験者を集め、それぞれの被験者の家族から当人の子供時代の出来事を聞き取り、本当のエピソード3つに、『ショッピングモールで迷子になった』という嘘の話を付け加えて小冊子を作りました。
被験者にはこの小冊子を読み、もし記憶にない場合は「これは覚えていない」と書きこむよう指示しました。
ロフタスの結果では25%が(実際には迷子になっていないのに)迷子になった記憶を“思い出し”、ロフタスはそのリアリティに驚いた、とあります。
4人に一人は空白の記憶を埋めるために自ら偽の記憶を、それもロフタスが驚くほどのリアリティをもって作り上げてしまったのです。
(ただしロフタスの実験には批判も存在する)
その後、ブリティッシュ・コロンビア大学のスティーブ・ポーターは約50%の被験者に『子供のころ猛獣に襲われた』と思い込ませることに成功しています。

お分かりでしょうか。
前世療法および退行催眠はクライアントに【偽物の記憶】を植え付けてしまう危険性があります。
しかもそれは施術者が意図的に誘導する事も可能であり、意図せずとも施術者側の実験者効果などにより虚偽記憶を植え付けてしまう事を否定できない、という事です。
そして人間の五感と言うのは非常に騙されやすくバイアスがかかりやすいため、(特に民間催眠療法家の)施術者自身が望んでいる結果へクライアントを誘導している事に気づかない場合が多いという事も考慮すべきでしょう。

【善意なら何をやっても許される】 というのは大きな間違いです。
危険性について十分に注意しましょう。

(※加筆修正中)

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